米国政府が2016年9月までの予算を確保するために成立させた法案に伴い、米国の原油輸出禁止措置が2015年12月に解除された。米国では、1975年のジェラルド・フォード大統領政権下において、原油の輸出が原則禁止となった。当時の米国は、増大するOPECの影響力に対する社会不安や、世界経済に対する米国の影響力の低下、そして後にスタグフレーションとして知られることになる低成長・高インフレが問題になっていた。実際には、長年に渡る大統領の権限行使や規則変更によって、禁止措置はいわば穴だらけの決まり事であった。そのため、輸出の解禁に伴う原油価格への短期的な影響は比較的小さく、生産を押し上げる主要因にはならないと考えられる。しかし、自由貿易にとっての摩擦や障壁が取り除かれることは、市場でのより強固な価格発見プロセスや、より効率的な資本配分につながる。それゆえ、輸出禁止措置の解除は、米国の石油(West Texas Intermediate、通称:WTI)が国際的なベンチマークとして担う役割において、ポジティブな要因であろう。以下に、いくつかの重要な質問に対する私たちの見解を述べる。
米国政府が2016年9月までの予算を確保するために成立させた法案に伴い、米国の原油輸出禁止措置が2015年12月に解除された。米国では、1975年のジェラルド・フォード大統領政権下において、原油の輸出が原則禁止となった。当時の米国は、増大するOPECの影響力に対する社会不安や、世界経済に対する米国の影響力の低下、そして後にスタグフレーションとして知られることになる低成長・高インフレが問題になっていた。実際には、長年に渡る大統領の権限行使や規則変更によって、禁止措置はいわば穴だらけの決まり事であった。そのため、輸出の解禁に伴う原油価格への短期的な影響は比較的小さく、生産を押し上げる主要因にはならないと考えられる。しかし、自由貿易にとっての摩擦や障壁が取り除かれることは、市場でのより強固な価格発見プロセスや、より効率的な資本配分につながる。それゆえ、輸出禁止措置の解除は、米国の石油(West Texas Intermediate、通称:WTI)が国際的なベンチマークとして担う役割において、ポジティブな要因であろう。以下に、いくつかの重要な質問に対する私たちの見解を述べる。
それは考えにくい。2014年第4四半期に始まった世界的な原油価格の低迷は今も続いており、価格の長期的な見通しが将来の生産量を決定づける要因であることに変わりはない。中国は引き続き減速しており、新興国市場の成長は停滞気味だ。欧州の実質GDPは1~2%程度の成長率で、米国はそれよりも少し高く、日本は少し低いくらいだろう。つまり、需要を劇的に押し上げる要因はどこにもない。また、石油は主として移動のための燃料だが、移動にかかるエネルギーは年々効率化されてきている。要するに、需要サイドには価格の再上昇につながる要因はない。一方、供給サイドでは、2015年に石油セクターへの投資がほとんど無かったことや、価格の低迷が今後何年にも渡って続くという一致した見方によって、米国における2016年の石油生産は減少すると私たちは見ている。しかし、米国やカナダで2016年に減産が行われたとしても、中東地域の増産によってその影響は相殺されるだろう。これには、世界の石油市場に復帰するイラン産原油も含まれる。それでも、バッケン-WTI間のスプレッド(価格差)が縮小することで、米国の生産者には若干のメリットがあるだろう。なぜなら、今後はバッケンを含む国内産のスイート原油を国外でも売れるようになり、全体として収益の増加が見込めるからだ。
原油輸出の解禁は、北海ブレント原油とWTI原油の価格差を段階的に縮小させる変化をもたらす可能性がある。実際、12月には、米国の原油輸出が解禁されるかもしれないというニュースとともに、異なる原油グレード間の相対価格に変化が見られた。スポット市場と先物市場の両方で、WTI-ブレント間のスプレッドが僅かに縮小した。また、バッケン-WTI間のスプレッドも縮小した。加えて、米国のメキシコ湾岸地域では、サワー原油(例:Mars)に対して、WTIとLLS(ルイジアナ軽質スイート原油)の相対価格が上昇した。輸出の禁止措置は、米国のメキシコ湾岸の市場において、サワー原油に対するスイート原油の相対価格を人為的に抑制していた。そのため、この市場では原油の輸出解禁が発表されるまでの数週間に渡って、スイート-サワー間のスプレッドに明らかな変化が見られた。
2006年以前は、米国の石油生産量がまだ少なく、米国北東部の石油精製所でWTIとブレントが競合していた。1993年から2006年にかけては、スポット市場におけるWTI-ブレントのスプレッドは極めて小さく、それほど大きな変動もなかった。その後、米国の石油生産の急激な増加によって、高値で売れる地域に石油を輸送するためのインフラが追いつかなくなった。また、石油精製品の輸出もまだそれほど増えていなかった。2011年~2012年にかけては、ブレントはWTIよりも常に20ドル高く取引されるようになり、2011年9月には29.70ドルという最大の価格差をつけた。このとき、市場は一時的に分離した。2013年と2014年には、米国における石油の輸送、および貯蔵のためのインフラが整い、生産量の急増に対応できるようになったことで、スプレッドは著しく縮小した。原油の輸出解禁は、あらゆる産地の原油間で競争を高めるため、何年か後にはブレントとWTIの平均的なスプレッドがゼロに近づくことも予想される。しかし、北海での天候被害やメンテナンス供給の障害、そしてブレントの生産量の減少がもたらすベーシス・リスク(連動性の高い二つの金融商品の乖離によって損益が変動するリスク)はきわめて高く、スプレッドが平均値を挟んで大きく変動する可能性もある。
輸出解禁がもたらすもう一つの影響は、輸送コストが低く、精製需要が高い地域に米国の石油が輸出されるようになることだ。そのため、米国からアジアへの石油輸出がいくらか増えるかもしれない。原油の多くは、消費国よりも精製国に輸出されることを忘れてはならない。そのため、米国産原油の行き先は、他の産地の原油との輸送コストの違いに加えて、国内外の精製能力の変化にも左右されるだろう。
米国の精製業者はきわめてコスト効率が高く、輸送と貯蔵のコストを重点的に管理することで、国際的な競争でも優位に立っている。世界中のほぼ全ての国において、精製所を新たに建設するための許可を得ることは不可能ではないが、とても難しい。精製所を新たに建設するためには、数十億ドルの資金、安定的で予測可能な需要、そして精製所に原油を運ぶ際の安価な輸送コストといった条件をクリアする必要がある。世界の精製所を取り巻く環境の変化は、何年か後には石油精製品の輸出に影響を与えるかもしれないが、その変化はすぐには起こらないだろう。そのため、原油の輸出量が増え続けたとしても、米国の精製品の輸出は競争力を維持できると考えられる。
長期的には、精製所の競争が激しくなるとともに、原油市場の効率性が少しだけ向上し、結果として原油と精製品の相対価格のスプレッドは徐々に縮小していくかもしれない。この変化には時間がかかり、比較的小さい影響にとどまる可能性がある。
輸出の解禁によって最も大きな影響を受けるのは米国のメキシコ湾岸地域で、西海岸とアラスカへの影響はそれよりも小さい。米国のメキシコ湾岸地域では、WTI原油を輸出するためのインフラがすでに整備されており、原油や軽質コンデンセート製品、そしてプロパン等の天然ガス液(同じ輸出ターミナルを使用)が米国から盛んに輸出されている。現時点では、輸出のいかなる増加にも対応できる十分なキャパシティがある。
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