ここ数週間、エネルギー市場の焦点の大部分は石油輸出国機構(OPEC)が大半であり、その加盟国のほとんどは4.5~5.0%の減産に合意した。今回の合意により、原油価格は1日で9%急騰し、その後の数日間でさらに4%続伸した。
OPECの決定が重要であることは疑いの余地はなく、 この結果としてWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は1日の出来高が過去最高に達したとはいえ、これは、決してエネルギー価格の先行きに影響を与えうる唯一の重要な供給要因というわけではない。2008年以来、米国は、サウジアラビア等のOPEC加盟国に主要スイングプロデューサーとして加わり、米国のエネルギー業界は、増産に向けて態勢を整えている可能性がある。
エネルギーサービス会社のBaker Hughesによると、米国の石油の掘削リグ稼働数は、5月終盤に底を打って以来、極めて低い水準からとはいえ60%を超える伸びを示している(図1)。 これは、米国の生産量増加の兆しの可能性があり、OPECの減産の効果が帳消しになりかねない
事実、米国の生産量は既に増加に転じている。2015年4月の日量959万バレル から2016年7月初頭に同843万バレル まで減少した生産量は、 その後2016年12月までに同879万バレル(図2)まで増えた。
米国の生産量拡大によって、原油価格の上値が抑えられる可能性がある。 さらに、原油価格が続伸すれば、掘削リグの稼働数を増やすインセンティブが働き、よって生産量が増加するとみられる。 仮に米国の生産量がピーク水準に戻ったとしたら、 1月1日に開始したOPECの日量 120万バレルの減産案のうち90万バレルは帳消しになるだろう。加えて、OPECがどのぐらい厳密に減産枠を順守するかは不明である。これは、減産合意の条件に基づき、順守状況を監視するアルジェリア、クウェート、ベネズエラ次第である。サウジアラビアのような諸国は、伝統的に約束は守るものの、生産が分散化して中央政府が弱体化しているイラクのような諸国は、国内生産を管理するのは困難になるかもしれない。そのため、OPECの実際の生産量は日量120万バレルをかなり下回る可能性があり、これは世界全体の生産量の約1.3%に過ぎない。
エネルギー価格のもう一つのハードルは、在庫になる公算は大きい。米国は、在庫に関する最新情報を公開している唯一の国ではあるものの、米国のデータは、市場が供給過剰になっていることを示唆している。在庫は、依然としてほぼ過去最高水準で推移しており、2015年に35%の伸びを示した後に、季節調整済みで前年比7%伸びている(図4および図5)。
そのため、OPEC合意後の上昇局面は持続する可能性があるとはいえ、 長期の強気相場は、困難なケースになりそうだ。
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Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。
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