11月8日の大統領選投票日以来、株式市場は驀進状態となっている。しかしながら、全てのセクターが同様に好感されているわけではない。上昇が著しいのは、金融、エネルギー、工業、そして素材関連の銘柄となっている。一方で、特に公益や一般消費財は、高まりに欠ける展開ともなっている(図1)。
実際には、こうした一般的な理解に反して、我々が以前リリースしたリポート、"Four Key Drivers of Equity Sector Performance"(株式パフォーマンスの主要な4つの要因)で明示したポイントが、それぞれのセクターの相対的なパフォーマンスを決定付けている。前回のリポートでは、短期金利の見通し、米ドル、原油や銅の価格などが要因となって、S&P500指数に対してE-Mini S&Pの各セクター指数先物がオーバー/アンダーパフォームすることを解説した。こうした要因の全ては選挙投票日以来、活発な動きを示しており、全体として、各サブインデックスのS&P指数に対する相対的なパフォーマンスを明確に説明する結果となっている。
例えば、金融株上昇の背景は何か?その大部分は、11月8日以降、市場で高まりを見せている2017年、そしてそれ以降のFRB(米国中銀)による政策金利引き上げ期待である。金融株は全体として、FRBによる政策金利引き上げに対する期待が高まると、S&P500指数を相対的に上回って上昇する傾向がある。反対に、公益やエネルギー、一般消費財などのセクターにとって、金利上昇は弱気材料となる。
選挙後、FRBが将来的に一段と政策金利を引き上げるとの市場期待は、大きな高まりを見せた(図3)。こうした期待の背景には、次期政権の緩和的財政運営(減税、支出拡大や財政赤字拡大)による経済成長の加速見通しもあると考えられる。ただ、今回の選挙の結果とは関係なく、こうした緩和措置は時が来れば実行された可能性もある。7年来の景気拡大が続くなか、長く仮眠状態にあったインフレは覚醒しようとしており、雇用市場はタイトさを増している。
さらに、エネルギー価格の上昇は、金融株にも強気材料となる。エネルギー会社の多くが多額の銀行債務を抱えていることから、原油価格が暴落した際に事業の継続が不安視され、銀行のバランスシートに痛手を負わせる可能性が指摘されたことを考えれば、この関係は驚くべきことでもない。素材銘柄も、エネルギー価格上昇の恩恵に浴するアウトパフォーム・セクターである。一方で、エネルギー価格の上昇局面では、ヘルスケア、消費関連、公益などの銘柄は、典型的なアンダーパフォーマーとなる。今回の選挙以降の相場も、その例外ではなかった
ここでも、選挙後の相場で、期待される規制緩和を背景に特定のセクターが上昇するという漠然とした見識よりも、ファンダメンタルズ要因に基づいた解釈の方が、各セクターの相対的なパフォーマンスをより良く説明している。
最後に、選挙以降、その他のほとんどの主要通貨に対して、米ドルが上昇する結果になっている。米ドル高は大体において、海外市場での米国企業の競争力を阻害し、米株にとって弱気材料となる。もちろん、これには例外もある。一般に、ドル高は金融株には強気材料である一方、素材や公益などの銘柄にとっては弱気材料なのである(図7)。銅価格が上昇する一方で、素材関連銘柄が期待したほどの上昇となっていない背景は、ここにある。
金利動向や通貨、商品価格がどう動くかによって、株式市場での相対的なセクター・パフォーマンスは続くものと考えられる。短期金利には、依然として上昇リスクがあると思われる。米国の雇用市場はタイトな状況であり、インフレは上昇し始めている。市場予想よりも早く金利が上昇すれば(2017年には2度の政策金利引き上げが見込まれている)、金融株にとっては強気材料であり、それ以外のほとんどのセクターにとっては弱気材料となる。これはまた、他のセクターに比べて、金融株のボラティリティーを一段と高めることになる。また、株式市場の下落は金利上昇期待を後退させることになり、金融株を一段と調整させる要因となる。金利が上昇すれば、他通貨に対して、米ドルが一段と上昇することになり、金融株に強気材料を提供するものの、その他の多くのセクターにとっては弱気材料となる。
エネルギー価格の先々は、見通し難くなっている。弱気材料は、原油の在庫水準が例外的な高水準に達している一方、その増加が続いていることである。米国内の生産は再び拡大傾向となっていて、OPEC加盟国がどの程度まで減産枠を遵守するかは不透明である。強気材料は、米国在庫の増加率が格段に低下しており、生産の安定性にも多くの問題を抱えていることである。原油価格の上昇は、その他に比べて、エネルギーや素材、金融などのセクターへの恩恵となりやすい。
最後に、銅価格の動向は中国の状況に敏感な反応を示す傾向が強い。そして中国景気に関しては、一段と鈍化する可能性がある。2017年に銅価格が下落するとすれば、素材銘柄にとって弱気材料であり、工業やエネルギーなどのセクターに関しても同様と考えられる。ただ、その他のセクターに対してはアウトパフォームを誘導すると考えられる。
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Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。
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