状況: CMEグループのビットコイン先物では、4つの限月が上場されている。これによって参加者は取引に柔軟性が確保できると共に、異なった時間軸における価格動向にも対応できます。
先物取引では投機取引のほとんどが最終取引日を前に反対売買によって清算されます。もちろん反対売買が行われない建玉もあり、ビットコイン先物の場合、こうした建玉はビットコイン参照基準レート(BRR)に基づいて差金決済されます。
一方で機関投資家や基金、投資信託などの一部投資家には、限月の最終取引日を超えて建玉を保持するニーズも存在します。取引を終了する限月から先の限月に建玉を移管する手法は、先物限月のロール(ローリング・フォワード)と呼ばれています。この手法では限月間スプレッドが使われます。
限月間スプレッドを使うと、取引終了を迎える限月から先の限月への建玉移管を単体の取引で完了することができます。ビットコイン先物の限月間スプレッドでは選択する先の限月によって、1か月やそれ以上先に建玉を移管することが可能となります。限月間スプレッドを使ってビットコイン先物の建玉を先の限月にロールする手順を解説します。
図1はこの時点でのビットコイン先物の上場限月一覧となります。直近の月より2限月、四半期サイクルから2限月が上場されます。今回のケースでは、直近の暦から1月限と2月限、四半期サイクルから3月限と6月限が上場されています。
図1: ビットコイン先物価格 2018年1月4日
大口投資家はビットコイン先物2018年1月限 (BTCF8)の50枚の買玉を持っている。この投資家が1月限の最終取引日(限月の最終金曜日)を過ぎて、この買玉を保持したいと考えている。そこで限月間スプレッドを介して、この建玉を1月限から3月限(BTCH8)に移管する。発注を受けたFCM(先物業者)が、この限月間スプレッドを実行する。
限月間スプレッド取引は1回の取引で1月限と3月限の取引が、同時に実行される/全く実行されない、いずれかの結果となります。従って取引機会の喪失リスクが小さいといえます。
ビットコイン先物のこの例では、先物業者は1月限(BTCF8)を50枚売ると同時に3月限(BTCH8)を50枚買うことになります。1月限には既存の建玉があることから、限月間スプレッドで1月限を売り3月限を買うことにより、1月限には反対の建玉がもたらされることになり1限月の建玉は解消されます。ビットコイン価格が上昇を続けると仮定した場合、3月限には新たに50枚の買玉が発生したことになり、収益機会を2か月延ばしたことになります。
この例ではロール先の限月を3月限としたが、各限月の相場状況やビットコイン価格の見通しによって、投資家が2月限や6月限をロール先として選択する場合もあり得ます。
スプレッド取引の売買様式は、商品によって異なる場合があります。例えば株価指数先物と債券先物ではロールが行われる際の限月間スプレッドで、売買の限月の順序が異なります。ビットコイン先物の限月間スプレッドでは、スプレッドの買いは期先の買い(同時に期近を売る)を指し株価指数先物も同様となります。
従って期先の限月(3月限)を買い、同時に期近の限月(1月限)を売った前述の例は、限月間スプレッドの買いと同じです。以下、限月間スプレッドの商品ティッカーの参照例となります。
BTCF8 – BTCH8は、2018年1月限/2018年3月限のスプレッド(このスプレッドの買いは、3月限の買い/1月限の売りを意味する)
BTCH8 –BTCM8は、2018年3月限/2018年6月限のスプレッド(このスプレッドの買いは、6月限の買い/3月限の売りを意味する)
スプレッド価格は期先から期近の価格を引いたものとなる。限月間スプレッド取引が完了すると、次の方法で2つの限月の先物は値決めされます。
期近の先物価格にスプレッド価格を加算します。
【例】
BTCF8—BTCH8の限月間スプレッドを+130ティックで買い
BTCF8の直近の清算価格が14,975だったとする。
各限月の価格:BTCF8の売り価格は14,975, BTCH8 の買い価格は14,975 + 130 =15,105
限月間スプレッドの価格はマイナス値となる場合もあり、例えば期先の3月限の先物価格が期近の1月限の先物価格を下回る場合など挙げられます。
2018年初めの段階では、ビットコイン先物の価格は期先に行くに従って価格が上昇(順鞘)する状況となっています。従って限月間のスプレッド価格はプラス値となっていますが、相場状況は変化する可能性もありスプレッド価格がマイナス値となる場合もあります。
またビットコインには配当やクーポンもなく、スポット取引されるビットコインでは売りから入ることがとても難しいかもしれません。ビットコイン先物では比較的簡単に売りから入ることができ、ウォレット・リスクもありません(先物取引でウォレットはいりませんが、スポット市場でビットコインを購入には必要となります)。
こうした要因は期先の先物限月の価格に反映されることになります。金利水準が高い市場環境では、ビットコイン先物の限月間スプレッド価格はプラス幅が拡大しやすいと考えられます。市場環境が極端な弱気に振れる場面では、期先が期近の先物価格を下回り、スプレッド価格はマイナス値になると考えられます。
ビットコイン先物は新規のプロダクトであり、ボラティリティーも比較的高いことから、大口小口に関係なく、投資家としてはその特性を認識しておくべきである。