米国の原油在庫は2020年4月に急激な増加を見せたものの、ピークを経て、減少に転じ始めています。EIA(エネルギー省情報局)によると、米国の原油在庫は2020年4月、月間増加量が4800万バレルに達するなど、膨大な量を記録しました。EIAのデータによると、クッシングでは2020年4月、在庫が2,300万バレル増加し、ピーク時には実務容量の83%となる、6,500万バレルに達しました。2020年7月末時点のクッシングでは、在庫は5140万バレルまで、つまり実務容量の65%まで、減少しています。
さらに、2020年4月には、オクラホマ州クッシングとルイジアナ州のLOOPターミナルでは、高まりを見せていた貯蔵施設の経済性を利用する市場の動きが急速に進み、施設の稼働率が大幅に高まりました。実際、CMEグループのLOOP原油貯蔵先物は、バレル当たり0.07ドルほどだった2020年3月に対して、同年4月には0.55ドルへ急伸する結果ともなりました。さらに、Matrix Marketsが主催する貯蔵スペースの競売では、タンカーでの留め置きがバレル当たり0.50ドルに達し、クッシングでの貯蔵コストが2020年3月、上昇する背景となっていました。
COVID-19パンデミックに伴う世界需要の後退、そして直近のOPEC +会合による供給ショックを背景とした需要崩壊と過剰供給は、2020年3月と4月、原油在庫の水準を上昇させていました。結果として、裁定価格の示唆を受けた市場は、米国のメキシコ湾岸市場での輸出裁定取引の低下を背景に、原油を貯蔵施設に流入させる方向に向け直す形で、不安定な市場のファンダメンタルズに対応しました。順鞘となっていたNYMEX軽質スイート原油先物は、原油を貯蔵することへの市場インセンティブを高め、クッシングのハブに原油を流入させたのです。実際、米国湾岸やペルミアン盆地まで拡張されたパイプライン・インフラは、市場に重要な選択肢を提供するものとなり、原油をクッシング、そしてその他の湾岸貯蔵施設のハブに送ることが可能となっていました。原油を貯蔵する事による経済性から利益を生じさせることが、可能となっていたのです。パンデミック後、石油需要に世界的なの回復が見られ、裁定価格の示唆は貯蔵施設からの原油の流出を促し始め、精製セクターと輸出市場にこれを向け始めたため、原油の在庫水準は低下しました。
市場参加が裁定取引価格の不安定な示唆に対応し、これに関連した価格のリスク・ヘッジも背景となり、2020年上期の石油業界は、前例のない世界市場のファンダメンタルズから強いストレスを受ける結果となっています。
EIAは、2020年4月に米国の原油在庫レベルが急上昇し、2020年6月には、5億4100万バレルに達したとしています。EIAによると、この水準は、米国の実務在庫容量とされる6億7200万バレルの62%に相当します。その後、2020年7月末までに、米国の原油在庫は5億2,600万バレルへ、つまり実務容量の59%まで減少しました。以下のチャートでは、米国の原油在庫の急速な増加、そして直近の減少を示しています。
EIAは、クッシングで2020年4月、月間2,300万バレルという記録的なペースで増加した原油貯蔵量は、2020年5月1日に6,500万バレルで、ピークに達したとしています。この水準は、7,600万バレルとされるクッシングの実務容量の83%に相当します。2020年7月末時点のクッシングでは、在庫は5140万バレルまで、つまり実務容量の65%まで、減少しています。
COVID-19パンデミックに伴うロックダウンを経て、経済活動が世界的に再開されると、原油生産が減少する一方で、製油施設の需要が、緩やかながら世界的な回復を見せたことから、2020年5月のNYMEX軽質スイート原油先物(「WTI先物」とも呼ばれる)の価格曲線は、フラット(平坦)化する動きとなりました。市場が裁定取引の示唆に迅速な反応を見せたことから、WTI先物は2020年4月上旬の「超順鞘」構造から、2020年5月下旬までに、限月間の価格差は適度な順鞘スプレッド構造に移行しました。
WTI先物における「超順鞘」は、2008年の金融危機後に発生した需要崩壊を背景として2009年初頭に、そして2012年にも発生していました。Seawayパイプラインでの逆流を前に、クッシングの排出パイプラインの容量に制約があったことがその背景でした。
さらに、2020年3月には、保管の経済性活用を急ぐ市場環境で、クッシングとルイジアナ州のLOOPターミナルで、貯蔵施設の稼働率が大幅に上昇しました。実際、CMEグループのLOOP原油貯蔵先物は、2020年3月にはバレル当たり0.07ドルほどであったのに対して、同年4月には0.55ドルへの急伸が見られる結果ともなりました。さらに、Matrix Marketsが主催する保管スペースのオークションでは、タンカーでの留め置きがバレル当たり0.50ドルに達し、2020年3月にクッシングで在庫が増加する背景となっていました。ただ、原油在庫が減少し始めると、CMEグループのLOOP原油貯蔵先物で示される保管コストは、2020年6月に、バレル当たり0.10ドルまで下落しました。
COVID-19パンデミックとOPEC +会合を背景とする極端な需要崩壊と供給ショックに対応し、さらに原油在庫の増加に伴う価格リスクの管理ニーズに対応するため、市場は裁定価格の示唆に反応したのです。価格裁定取引のボラティリティーは高まり、これによって米国のメキシコ湾岸市場での輸出裁定取引が減少したことから、原油は2020年4月、記録的なペースで貯蔵施設に流入する結果になりました。精製需要の回復が世界的に緩慢なものとなっているなか、裁定価格は貯蔵施設からの原油流出を示唆し始め、これが精製施設や輸出市場へと誘導され始めていることから、原油在庫はピークを経て、減少に転じ始めています。市場が再び均衡し始めると、市場参加者は、パンデミック後に出現する「新常態=ニュー・ノーマル」の先にある価格リスクのヘッジという課題に、直面することになります。
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