COMEX金の市場動向 2020年

  • 7 Oct 2020
  • By Gregor Spilker

金の正当価値は、どれくらいでしょう?COVID-19を受けて、ポートフォリオやリスクの取り方に調整を強いられるなか、これこそ市場関係者が自問自答を迫られた問題でした。2020年に世界経済が直面した未曾有のショックでは、これに影響されなかった資産クラスは1つもありませんでした。8月にはトロイオンス当たり$2,000を超え、この金属は世界市場の中心的な存在となりました。ここでは、背景となっている要因を個別に見ながら、COMEXの金先物市場で起きている最近の出来事を紹介していきます。

金価格のマクロ要因

世界経済が封鎖モードに入った3月、世界中の政府と中央銀行は迅速な行動を取りました。国民や企業の保護を目的として彼らが供給した支援は、金融市場にも波及しました。FRB(米中銀)とその他の中央銀行は、その必要がなくなるまで、政策金利を記録的な低水準で維持することを約束しました。資金の調達コストが安くなることでポートフォリオに金を保有する場合の機会費用が低下するため、低金利環境での金はより魅力的な資産となります。金価格上の別の要因: 金は米ドルで価格設定されるため、米ドルの価値が下がると当然、金価格は上昇します。米ドルは今年、世界の多くの競合通貨に対して下落: 例えば、ユーロ、円、スイス・フランス、中国の人民元などに対して、米ドルは価値を低下させていました。最後に、経済見通しが不確実で、投資家の多くは資産の安全な避難先として、黄金の金属へのエクスポージャーを拡大した、という可能性があります。

こうした背景は全て、金価格が$2,000を超えるために、ある意味で完璧な市場環境を作ったと言えます。以来、米ドルと金利は一時的に上昇の兆しを見せていることから、金価格は若干の下げとなっています。年末までには、来たる米国の選挙が注目すべき重要イベントの1つとなるでしょう。もちろん、Covid-19のパンデミックは未だ封じ込められていないため、引き続き金融市場や金価格にも大きな影響を与えるはずです。

金と実質利回り

出所:ブルームバーグ、CMEグループ

マイクロ金先物への取引参加者が増加

世界の金市場にとって激動の年となっている今年、COMEXのあるプロダクトは、その高い順応性と売買高の増加で、際立つ存在となっています。 マイクロ金先物 (MGC)のパフォーマンスが年初来、素晴らしいものとなっているのです。2020年8月の取引量は、想定取引規模で指標プロダクトである金先物(GC)の5%超に達しました(取引サイズを調整した上での比較になります)。この月、MGC先物は合計で170万枚の取引を達成しました。8月のこのパフォーマンスは、例外的なものではありません。これらは、実際値と対GCでの売買高の両方で、MGCの売買高が増加しているという全体的な傾向の一部分に過ぎないのです。この傾向は2019年の初め頃にスタートしたのですが、当時、売買高は月間で約25,000枚、GCの想定取引サイズの半分にも届いていませんでした。

MGC先物の継続的な成長

情報元:CMEグループ

MGC先物は実質的に、COMEX GCのレプリカであり、取引サイズはその10分の1です。サイズが小さいため、指標プロダクトであるGCの取引が初期の資本支出と毎日の清算要件の点で面倒だと感じる可能性のある投資家クラスにとって、MGCは利用しやすいプロダクトとなっています。売買高が増加していることで、MGCの市場流動性はGCの水準に近付いてきています。下のチャートでは、MGCのTOB(Top-of-book最良呼び値)における買値と売値のスプレッド(価格差)を、GCに比率換算して表しています。200%とは、MGCのスプレッドがGCの2倍である事、100%は両者が同等であることを表しています。データは、MGCがGCの水準に近付いていることを表しています。例えば8月には、MGCの主要限月におけるTOBスプレッドは1.82ティックであり、GCの1.74ティックとおよそ同水準となっていました。

MGC TOB / GC TOB スプレッド

情報元:CMEグループ

アジア時間の価格プレミアムはディスカウントへ

一般的に、中国の金価格は、国際市場の指標価格を上回ります。中国は金の純輸入国であり、国際市場を上回る価格は、金の輸出先として中国を魅力的にするのです。Covid-19危機が発生して以来、現地での貴金属需要は大きく後退しました。パンデミックの管理と広範な経済的不確実性によって、宝飾需要は特に大きな影響を受けました。十分な国内供給が背景となる一方で需要が後退したことにより、中国市場にあった金価格のプレミアムは、ディスカウントに転換するに至っています。その他の多くの国に先んじて中国経済がコロナ危機からの回復を見せる一方、このディスカウントは、解消する様子を見せていません – 少なくとも現在までは。

昨年、COMEXは上海黄金交易所(SGE)の価格にリンクした金先物を上場しました。このプロダクトに対しても、市場の関心が集まっています。COMEX SGE先物の建玉(未決済の先物枚数)は、米ドルと中国人民元建て、両方のプロダクトで1,000枚超と、過去最高水準に達しています。

上海のプレミアムは現在、確固としたディスカウント

出展:CMEグループ、ブルームバーグ

結論

今後数ヶ月で何が起こっても、2020年は金市場にとって記憶に残る年になると言えるでしょう。そして、11月には潜在的に物議を醸す可能性がある米国大統領選挙という大イベントを控え、2020年の最終章はまだ書かれていないのです。金相場は2020年、2,000ドルという歴史的な価格水準を突破する一方、その地域差は長期的に見られることのなかった規模で分断されました。COMEXの金市場では卓越したレベルの流動性に加え、あらゆるタイプの投資家や取引戦略に適した、幅広いプロダクトが提供されています。


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