2019年を通し、担保付翌日物調達金利(SOFR)が急速かつ継続的に導入され、SOFRは代替参照金利として米国において定着しつつあります。当該ベンチマークに対する認識の高まり、変動利付債市場への参入、SOFRを参照するOTCスワップ取引の清算により、さらに多くの市場参加者が、短期金利のリスクに対しヘッジを行い、その結果、先物取引における流動性が高まりました。
連邦準備制度理事会は2019年秋期、フェデラル・ファンド金利の誘導目標を変更しました。これにより2018年には4回の利上げを実行しましたが、そのうちの3回分が無効となります。9月中旬には、翌日物レポ金利が280ベーシスポイント以上高騰し、注目を集めました。当月は最終的に53bpsの上昇となり、流動性の需要による変化は一般的に20~30bpsであることと比較しても、アグレッシブであったということがわかります。
この短期金利におけるボラティリティが急騰したことで先物商品が高値で取引され、CMEが提供するSOFR先物が、資金調達リスクを管理するためのリスク管理ツールとして有用であるということが明確になりました。9月には、日次取引高が58,000枚以上まで増加し、建玉は282,000枚から429,000枚へと跳ね上がりました。
CMEの広範囲におよぶ流動性プールの後押しもあり、フェデラルファンド先物(SR1に対するスプレッド)およびユーロダラー(SR3に対するスプレッド)における商品間スプレッドもまた下半期に増加しました。秋期にボラティリティが急騰した期間中、商品間スプレッドの平均取引高は、SOFR先物全体の25~35%に達しました。
2019年第4四半期の平均日次取引高は、1年前の11,000枚から、最終的に42,000枚まで増加しました。建玉も同様に、53,000枚から482,000枚へと増加しています。DV01と表現されますが、1ベーシスポイントのドル価値の変動幅は、1日で1億5000万ドル近いリスクの移転が行われているということを意味しています。
市場の流動性が深くなると同時に、範囲も広がりました。米商品先物取引委員会による、多数のポジションを保有している市場参加者の評価基準である「Large Open Interest Holders」は、2018年末には65であったのに対し、2019年には161まで跳ね上がりました。これは、大口ヘッジャーに対する取引相手候補が多数いる、ということを証明しています。
2019年、変動利付債の発行は、米国政府支援機関や大手民間金融機関に加え、さらに今まで以上の数の小規模および国際金融機関が参加し、好調な滑り出しを見せました。銀行24行を含む合計45団体が、300件以上、計2,770億ドルを発行し、2018年の発行数と比べ、10倍近い増加となりました。
また、11の連邦住宅貸付銀行で、2021以降全ての発行へSOFRを採用、ロイヤル・ダッチ・シェルの100億ドルのSOFR連動リボルビングクレジットファシリティー、フレディマック初のSOFRに連動した商用モーゲージ証券発行など、多数の機関が、新たなベンチマークであるSOFRへの移行を示しました。これらの動きは、翌日物金利の需要増加を反映し、後日計算される金利へ対するリスク管理へのニーズの高まりを示しています。
2019年、SOFRを参照するスワップ取引が開始され、特にこの年の年末にかけて、今まで以上に頻繁に清算されるようになりました。CMEでは2019年12月に最高額210億ドルを清算し、SOFRを参照するスワップ取引において、2019年の清算総額は440億ドル以上にのぼりました。
CMEでは2020年10月16日に、既存の米国ドル清算スワップ取引を対象とするディスカウントおよび価格調整額の決定に用いている現行の実効フェデラル・ファンド金利からSOFRへと移行することから、2020年は、この流動性をさらに高めることができると予測しています。これは、該当する市場に関わる全ての人から注目されるであろう、市場主体のイベントです。
SOFR先物取引が通年行われる最初の年として、2020年にはエコシステムのさらなる発展を約束する展開が待ち受けています。3ヶ月物オプション取引が1月6日に開始となり、連邦住宅貸付銀行など大手の債券発行者数件が、主要な米ドルベンチマークとしてSOFRへ移行する予定です。これによりターム物金利の利用が広く期待され、ヘッジや先物市場における流動性の可能性へのニーズが高まることとなるでしょう。